「京都」と聞いて、どんなイメージが浮かぶでしょうか。
春の桜、秋の紅葉、清水寺や金閣寺と名所旧跡も数知れず、江戸時代の作家、滝沢馬琴も京のよきものとして「女子、賀茂川の水、寺社」をあげています。歴史都市、文化都市、大学の街等々京都に付く冠はいろいろありますが、一番は「都」でしょう。
「都といえば京」以外になく、昔から人々の憧れをかきたててきました。
また古きよきもののほかに、チェーン店に押されているとは言え、まだまだ個性的な喫茶店や古い洋食屋がある、おいしいパンやケーキ、チョコレートもレベルが高い、他都市に例をみないマンガミュージアムの建設など、新進の気風もあわせ持ち、その点も世代を超えて多くの人が訪れる吸引力なのかと思います。
ある時、老舗の和菓子屋さんで買い物をしていると、ランドセルの女の子がばたばたとかけこんできました。そして、やおら小さな財布から小銭をじゃらじゃら出して「今日のおやつ、何にしよ」と品定めを始めたのです。お小遣いで買えるお菓子を選び「ここの水羊羹はほんまにおいしい」と言い残して帰って行きました。小学生でもりっぱに「京都のお人」です。「いけず」「京のぶぶ漬け」「一見さんお断り」など、本当の意味はいざ知らず、京都というまちの性格を表す代表的な言葉としてとらえられていますが、京都は本当に奥深いまちです。日常の些細な場面でも「おっ」と思うことに出会います。
尊王の思想家として吉田松陰などに影響を与えた高山彦九郎が、御所の方角に向いてひざまずいている大きな銅像の前は「土下座前」と呼ばれ、若い人たちの待ち合わせ場所となり、同じく幕末に坂本龍馬とともに京のまちを駆け巡った中岡慎太郎の「寓居跡」と刻まれた標柱が建つ場所には、抹茶ティラミスを目当てにいつも長蛇の列です。
このように、町並みや暮らしの様式、人々の意識も大きく変化しましたが、1200年の都の気質を今も受け継ぎ、京都はひとくくりにはできない、多面的な顔を持っています。最もプライベートな空間でありながら、町並みを形成する重要な要素である「住まい」を「都に建てる」建都がとらえた、様々な京都の姿をお届けしてまいります。
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