それぞれの土地の匂いがする名物市から、フリーマーケット、手づくり市など日本の各地に、実に様々な「市」があります。全国の主な市を集めた本も出版されるなど、すっかりみんなが楽しめるエンターテイメントになっています。
毎月21日の東寺の弘法さん、25日の北野天満宮の天神さんをはじめ、お寺や神社の境内で開かれる市、学生や若手作家によるアートフェア、若い骨董ファンが集まる古道具市など、個性的な市が多いのも、京都の特色と言えるでしょう。
すがすがしい境内で昔ながらの市「ほんびょうさんの朝市」
「ほんびょうさん」とは、親鸞の墓所である大谷本廟のこと。
環境問題への関心が高まるなか、まず身近な「暮らしと食」を見直そうと、安全安心にこだわる生産者と、それを求める消費者をつなぐ場として、毎月第3日曜日に開かれている朝市です。「人と人が、心と言葉を交わす市。かつて、境内で開かれていた昔ながらの朝市にという趣旨にひかれて行って来ました。
真夏を思わせる日差し、青々と葉を繁らせた木立ちに映える薄紫色ののぼり。ぽん菓子、木工品、布小物、棕櫚たわしなど、こじんまりした規模の、伸び伸びした雰囲気のなか、ゆっくり見て歩くことができます。すがすがしい緑の多さも魅力です。
きちんと黒の礼服を着た参拝の人が、出店ブースに立ち寄る光景が「ほんびょうさんの朝市」らしい感じです。
今朝、家の近くで採って来たという、葉付きのふきを買いました。葉っぱは湯がいて、よくよく水にさらしてから、ちりめんじゃこと炊きます。こうした手間仕事も、季節を味わう楽しさのうちと思います。
“世界の国からこんにちは”エネルギーあふれる弘法さんの市
こちらはすごい人です。「最高に旨い」と言って、ビールにたこ焼きで盛り上がっている人たちがいます。
上賀茂の農家で作っている柴漬けと、お買い得のすぐき漬けの葉を買いました。
瀬戸内海の島で育てた甘夏は、見た目は無骨ですが、中身がぎゅっと詰まった実直なおいしさを感じます。大人気の無農薬レモンは売り切れでした。残念がっていると、来年をお楽しみということで、お手製レモネードと、小さな甘夏1個をおまけしてくれました。
境内は外国の人の姿が目立ちます。きものをはおってみては、身ぶり手ぶりで何事か交渉しています。その店のご主人によると「外人さんのほうが、うまいこと工夫して古いものをじょうずに使わはる」そうです。
あれこれ迷って、結局、古布4枚を買いました。微妙な色あい、デザインが新鮮、細部に宿る職人技。小さな布に、京都のものづくりの心意気を垣間見る気がします。こういうめぐり合いも市の醍醐味です。