5月に2回にわたってご紹介した、京都の西、乙訓の竹林では、来年も良い筍が育つように日々作業が行われています。
筍をとる親竹を選び、それ以外の「幼竹」を切る仕事も、待ったなしです。「京の伝統野菜」である筍の伝統的栽培法を継承し、乙訓地域の特徴的な景観である美しい竹林を守るための輪が、今、大きく広がっています。長岡京市の石田ファームと、向日市にある再生中の竹林での活動の様子をお伝えします。
厄介者の幼竹をおいしく加工する取組み
孟宗竹の筍の収穫が終わると、残った背の高いたけのこを切る作業は、成長して固い竹になる前「幼竹(ようちく)」のうちに切らないと処理が大変です。何しろ竹の成長は早くて、中には一日で1メートルも伸びることもあるくらいですので待ったなしの仕事です。そして、最近はこの幼竹を「純国産メンマ」に加工する取り組みが全国で広がっています。
石田ファームでは、この幼竹切りとメンマ作りが恒例となっていて、毎年顔なじみのみなさんが集まります。石田さんは「全国のラーメン屋さんに使ってもらえるメンマができるほどの幼竹。切っても切ってもまだある」と悲鳴をあげていました。
少し離れた竹林から軽トラックで運ばれてきた幼竹の皮をはがしていきます。主に2メートルくらいの大物を切ってきたので、皮もはがし甲斐があります。黙々と作業をします。ほとんど竹にしか見えないのですが、包丁を当てて、さくっと刃が入ったところから一定の長さに切り、湯がき、冷ましたところで塩漬けにし、重石を乗せて1か月ほどおくと、いい具合に水が上がり発酵します。
今年はコロナウイルスによる自粛中でしたので、募集をすることはできませんでしたが、その代わりに希望者には「おうちでメンマ」セットを発送することにしました。塩漬けした幼竹を宅急便でその日に発送。作り方がよくわかるすてきなリーフレットもできていました。最初に伺ったときにごちそうになった「メンマ」も、塩漬け発酵したものを塩出しして味付けしたものだそうですが、とてもよくできていました。石田さんはメンマの商品化を試みていますが、小ロットで加工してもらえるところがなかなか見つからないと言われていました。乙訓の新しい名産にぴったりです。何とか商品化に漕ぎつけることができればと思います。
一方、向日市の竹林では2017年にたちあげた任意団体「籔の傍(やぶのそば)」のみなさんが、竹林整備を通して、様々な活動をされています。5月も末の日、朝9時から、にぎやかに作業を進めていました。この竹林は斜面にあるので、切り倒した幼竹を、作業をする平坦な場所まで運ぶのも一苦労なのです。指令があるわけでもないのですが、みなさん自然と分担ができて和気あいあいと仕事を進めていました。湯がいた幼竹を計るのに、参加者の方がヘルスメーターを持って来て、幼竹を持って人が乗り、その体重を差し引くという方法が何とも楽しげです。この日は38㎏のメンマ用幼竹ができました。
お昼には、お味噌汁が振舞われました。具は油揚げとお豆腐に、幼竹の穂先。そしてお椀はその場で切ってくれた青竹です。今ある物を工夫し、活かして使うという、暮らし方の基本も教えてもらいました。
世代をつなぐ活動で、よみがえる竹林
任意団体「籔の傍」では、これまでに竹林整備を中心として、講演会、たけのこ堀り、たけのこお料理教室、竹かご編みなどを行ってきました。親子での参加も多く、顔なじみの家族も増えています。そして幅広い世代が参加していることが素晴らしい点です。
メンマ作り当日も様々な世代が交り合い、親戚が集まった大きな寄り合い的な雰囲気でした。包丁や火を使うこと、急な斜面の上り下りなど「危ない」と、心配されることが多いのではないかと思いますが、親子ともども伸び伸びと動いていました。
幼竹を担いで運んでくれた小学生の男の子は、竹皮のうぶ毛のチクチクで背中や腕が赤くなってしまったり、ずっと火焚き番をしてくれた男の子は、羽釜のふたを閉めたりずらしたり、火の加減を見ていてくれて、汗だくでした。おとなと一緒に作業をすることは、とても良い体験になるなと感じました。火の燃える匂い、目にしみる煙、竹の葉ずれの音、土の湿りなど、きっと心の奥にしまいこまれたと思います。
この竹林には、前回「暮らしの営みや 人とつながる建築の喜び」でご紹介した、京都建築専門学校の佐野先生と学生のみなさんがつくった玉ねぎ茶室のほかに、すべり台、ブランコ、シーソーなど竹尽くしの遊具もあります。茶室は子どもたちの、とても良い探検の場になっていました。この日も、佐野先生ご夫妻がみえてストーブの調子を見たり、パフォーマンスができるステージつくりのお話もされていました。これからどんなふうに進化していくのか楽しみです。
「籔の傍」では、6月28日、メンマ作りの先駆けとなった福岡県糸島市から「純国産メンマプロジェクト」の方のお話と「メンマ料理コンテスト」が企画されています。みなさん、どうぞ、ご参加ください。京都の竹林や環境について知り、考えるきっかけになれば幸いです。
石田ファーム
長岡京市井ノ内西ノ口19番1