祇園祭の伝統と新しい変化

「田の字型」と呼ばれる京都の中心部は、辻々に祇園祭の鉾や山が立ち並びます。
日中の蒸し暑さがいくらかやわらいだ頃、駒形提灯が灯り、お囃子の響きが重なり合い、一気に華やいできました。

京町家
最近は「◎◎鉾と○○大学」というように、それぞれの山鉾保存会と大学との連携が進んでいるようです。揃いのTシャツを着た学生が、一生懸命「ちまきどうですか」「手ぬぐいどうですか」と声を張りあげています。大学の多い京都の特徴です。
伝統のお祭への参加は、またとない貴重な経験になると思います。京都で学生生活を送るということは、こんなすばらしいチャンスにもめぐり合えるのです。

中国の故事や、当時はやった能の演目も題材に

山鉾の美術工芸のすばらしさは「動く美術館」と評されるほど価値の高いものですが、中国の故事や謡曲にちなむ、山や鉾の題材もまた、注目したい都の文化を示すものだと思います。

函谷鉾(かんこぼこ)
山の題材となった能を実際に演じる「宵山能」が一昨年から、後祭宵山の23日に行われています。会場は京都御所近くの能楽堂「嘉祥閣」。演者の息づかいまで感じられ、初心者にもわかりやすく、且つ趣きのある会でした。昨年は「八幡山」由来の「弓八幡」、今年は鈴鹿山にちなむ「田村」が演じられます。去年も今年も、もたもたしているうちに完売と相成り、初回を鑑賞したのみ。
祇園祭の楽しみをより深くし、これをきっかけに、能に興味を持ってもらえるようにという主宰者の思いが、伝統のお祭に新たな魅力を生みだし、これが真の京都の力だと感じます。

お囃子を復活させ、山の復興を目ざす鷹山

鷹山は、応仁の乱以前から巡行していた由緒のあるりっぱな曳山でしたが、190年前に大雨による大きな被害を受けて以来、巡行に参加しない「休み山」となり、ご神体を飾るのみの「居祭(いまつり)が続けられてきました。

鷹山の囃子方
そんななかで、地元の有志が集まり「鷹山復興」に向け、3年前に囃子方が結成され、その後、鷹山保存会の設立、公益財団法人の認定など、復興へ大きく弾みをつけています。地元の行事「たついけ浴衣まつり」でお囃子を披露し、「お囃子体験」は子ども達に大人気です。

ご神体をかたどった鷹山の授与品「犬みくじ」と「鷹みくじ」
鷹山のご神体は「鷹匠」「犬飼」と、樽を背負った従者の「樽負い」の三体です。かつては、樽負いが粽を食べる、からくり山だったそうです。ご神体をかたどった鷹山の授与品「犬みくじ」と「鷹みくじ」の表情がなんとも可愛いく、思わずにこっとしてしまいます。授与品は21日から23日まで販売され、夜の7時からはお囃子も披露されます。(室町三条)復興の目標は2026年。私たち一般市民も、その歴史に立ち合えると思うと、わくわくしてきます。

浴衣の子供達
時代が変わり、私たち一般市民も、何らかのかたちで、以前より近しく祇園祭や伝統文化にふれることができるようになりました。それは「もっと多くの人に知ってほしい」と願う、伝統文化に携わる方たちの「革新性」ではないでしょうか。それが、1200年の都でありながら、いつの時代も新しいものごとを追求してきた「京都らしさ」なのだと感じます。