子どもの守り神 三宅八幡宮

秋口から、あちこちの神社に「七五三参り」の案内が見られるようになります。子どもの健やかな成長に感謝し、これからも息災であるように願う七五三。「七歳までは神の子」と言われ、幼くして亡くなる子どもが多かった昔「無事に育ちますようにと祈る心は、切実なものであったことでしょう。夜泣き、かん虫封じにご利益があるとされ、子どもの守り神として、古くから信仰を集める三宅八幡宮は、七五三参りにふさわしいお宮さんです。

比叡山のふもと、自然と水が豊かな里

めずらしく気持ちよく晴れて、秋を感じる日、ゴトンゴトンと町なかを縫うようにゆっくり進む、叡電(えいでん)に乗って出かけました。京都の西を走る嵐電と対をなすと言える叡電。両方とも、地元電車=じもでん、と呼びたいおなじみの電車です。桜、新緑、紅葉、雪景色と、四季折々の車窓からの眺めのすばらしさが、多くの人に知られるようになりました。その日は比較的静かで、のんびりした気分になれました。

三宅八幡駅で降り、高野川にかかる三宅橋を渡り、旧参道から八幡宮へ向かうことにしました。比叡山が間近に見え、川の水は澄み、民家の脇を流れる用水路の水量も豊富です。旧参道には、家が建ち並んでいますが、昔は両側に桜ともみじの木が続き、春秋は本当にみごとだったし、お祭の時には参道に露店が並び、子どももたくさん来てそれはにぎやかだったと聞きました。
この一帯、上高野地域は、昔から農業が盛んでしたが、川が低い所を流れているため、水の確保には大変苦労したようです。江戸時代に造られた潅漑用の水路が、今も大切に利用されています。四方を見渡して、遮るものがないということも、気持ちが解放されます。

神様のお使いの鳩が守護

三宅八幡宮の手水場
いたる所に神様のお使いの鳩が
比叡山の谷水が引かれた池
比叡山の谷水が引かれています

三宅八幡宮本殿
三宅八幡宮は、応仁の乱により焼け落ちた神社を里の人々の力で復興させたという由緒が記されている、歴史ある神社です。庭には水の流れを巧みに生かした池があり、手水舎には、比叡山の谷川の水が引かれています。狛犬ならぬ「狛鳩」を始め、境内の到る所に鎮座する鳩の出迎えを受けてのお参りです。
「ここにいる。こんな所にも」と、次々見つけるのも楽しいものです。白い鳩は八幡宮のお使いとして、大切にされてきましたが、三宅八幡宮がなぜ、これほどまでに鳩との深い結びつきがあるのかは、定かではないそうです。本物の鳩が境内を闊歩し、時々お参りの人たちから、餌をもらっています。「生き鳩なんやから、こっちも大事にしてや」とでも言っているように、せっせとついばんでいる様子が、平和な感じで癒されます。

子どもが無事成長したお礼にお返しされた神鳩
素焼きに彩色した「神鳩」(しんばと)はつがいで授けられ、子どもが無事成長したお礼にお返しのお参りに来る習わしがあります。苔むした石灯籠に、小さなつがいの神鳩が何組も並べられているのを見て、ほっとあたたかい気持ちになりました。社務所で授与品をいただいている間にも、続けて七五三のお参りの予約の電話が入っていました。今日は静かな境内に、もうすぐ子ども達の元気な声が響くことでしょう。

鳩は平和の使者。人と人の友好を見守ります。

奉納された絵馬
三宅八幡宮に奉納された絵馬のうち、子どものかん虫封じや十三参りなど、子どもにまつわる身近な習わしを表した133枚が、京都市有形民俗文化財に指定されています。中には、かん虫封じのお礼参りの行列、なんと638人を描いたものもあります。社務所で伺った話では、絵馬に記載された名前、地名や職業名などで、奉納した人を特定して連絡をとり、絵馬を披露されたそうです。「これはお祖父さんや」とか「先祖がこんなりっぱなものを残してくれたんやから、私ら末裔もしゃんとして生きていかんとなあ」と感慨深げに話されたということでした。

鳩をかたどった鳩餅を茶店でいただくのも、参拝のお楽しみです。もち米を蒸したしんこのお餅です。白とニッキと抹茶の三種類があります。むっちりした歯ごたえと素朴な味わいは、凝ったお菓子が多い今、返って得難いおいしさのように思います。平日の午後の茶店は、散歩のついでにお参りして、茶店に寄るという近所の常連さんの世間話が聞こえてきました。境内の茶店は、さながら「近所の行きつけの喫茶店」の様相です。気軽にお参りできるご近所の神社、三宅八幡宮は、神社と地域や人との新しい関係を築いているように感じました。
 

三宅八幡宮
京都市左京区上高野三宅町