パン好き京都人に 愛されています

総務省の2016年度家計調査によるパンの消費量は、京都市が1位。「京都人のパン好き」が、数字からも見てとれます。いろいろな個性を持つおいしいパン屋さんがあちこちにあることも、パン好きを増やしているのかもしれません。
和の殿堂でありながら、琵琶湖疏水を造って水力発電を起こし、チンチン電車を全国にさきがけて走らせるなど、進取の気風に富む京都は、ハイカラな食文化を取り入れることにも積極的だったようです。

学生の街、左京区で地元の人に愛されるパン屋さん「HOLYLAND(ホーリーランド)」は、2月にご紹介した「茶山sweets Halle(ちゃやまスイーツはれ)と同じく、建都と長いお付合いのある、社会福祉法人修光学園の就労支援施設「飛鳥井ワークセンター」が運営する専用店舗です。
丹後産のジャージー牛バターと天然塩を使用した食パン、その名も「京の旨(きょうのうまみ)」が話題となり、おいしいパン屋さんとして注目を集めています。

利用者さんは、ベテランパン職人


京都大学の吉田キャンパスのある百万遍界隈は、喫茶店や書店、古書店、定食屋、銭湯が並んでいたまちの顔もだいぶ変わりましたが、それでも学生街の自由な雰囲気は失われていません。
百万遍の交差点から北へ400メートルほど行くと、スーパーマーケットの1階に、全面ガラス張りのパン屋さんHOLYLANDがあります。道を歩いていてもガラス越しに、焼きたてパンのいい匂いが漂ってくるような気がします。ここで作られるパンは80~90種類。店頭には常時60~70種類のパンが並びます。

ハード系のパンは、ビールやワインにも
デニッシュ系のパンも新作登場
コロッケも工房で作ります

運営する飛鳥井ワークセンターは、全国でも例を見ないと言われるスーパーマーケットとの合築です。2~3階にパン工房とその他の作業場、事務所、1階に専用店舗のHOLYLANDとなっています。センターが開設された1994年から製パン事業に取り組み、現在は15人の利用者さんと5人のスタッフが担当しています。


毎日、生地から作っているHOLYLANDでは、粉、イースト菌、塩、水の調合、捏ね、発酵、成形、必要に応じてトッピング、袋詰め、ラベル貼りなど、焼き上がって店頭に並ぶまでにたくさんの工程があります。一人一人の特性に合った、得意な部分を担当してもらっていますが、暗黙の了解のうちに自然と役割が決まり、それぞれが力を発揮し責任を持って仕事をしています。9割が10年以上のパン作りの経験があり、だれか一人でも休むと「あ、この工程困ったな」ということになる、ベテラン職人さん達です。
1階店舗での接客や、保育所、高齢者施設など、お得意さんへの納品やイベントでの販売に同行した時、自分たちの作ったパンが売れていく様子を目のあたりにして、みんなものづくりの喜びを実感し、ものづくり魂を熱くしています。

京都の旨みを集めた食パン誕生


試作を重ねてきた新しい食パン「京の旨」が完成し、昨年11月、支援事業所対象に行われた、パンのコンテスト、食パン部門でグランプリを受賞しました。ともに京都府北部の、久美浜で育ったジャージー牛の生乳から作られたバターと、網野町で作られる天然塩が持つ素材の良さを最大限に生かす、湯種製法の米粉を生地に混ぜて焼きあげた、香りがよくふわふわしっとり、深い味わいが特長です。
「1斤660円」という、食パンとしてはかなり高い商品になりましたが「おいしい」という実感がまさり、毎回完売の人気ぶりです。お店に見えたお客様も「自分へのごほうび」「ちょっといいことがあったから」など、パンのおいしさとともに、心の豊かさも味わっているようでした。

お話を伺った今井浩貴さん(右端)とスタッフのみなさん

この京の旨は、スタッフの今井浩貴さんが現地を見学した時「バターや塩を本当に丁寧に心を込めて作っておられるところを見て、ぜひこの材料を使って、もっとおいしいパンを届けたい」と思ったことがきっかけでした。
「グランプリを受賞した報告とお礼に生産者の方に京の旨を送ったところ、一緒になって喜んでくれて、それが本当にうれしかったです」と今井さんは語ります。そして「製パン課は、生産者さんをはじめ、本当に人に恵まれています。だからこそ、しっかり応えていきたい」と続けました。ここからさらに、おいしいパン作りへの道が始まります。

地域に根付き、地域で力を発揮する


京の旨の記事が新聞に掲載されると、問い合わせの電話も多く「読んだよ」と声をかけてくれるなど大きな反響がありました。自分達の作ったパンが評判となり「おいしいよ」「ありがとう」などお客様に喜んでもらえることは、ものづくりの醍醐味です。飛鳥井ワークセンターは、15人の利用者さんと5人のスタッフが、本気でパンと向き合い「一人一人がパン職人」の気概を持って働き、地域とつながる大切な場所です。
建都は保守、修理工事や、利用者さんの状況に応じた間仕切り新設工事、また日々の作業改善に伴うリフォーム工事などをさせていただいています。これからも、地域を豊かに住みやすく、働きやすくするためにみなさんと一緒に歩んでいきたいと思っております。