京都の工房で生まれた ギターの音色

京都は言わずと知れた手仕事のまちです。伝統産業の分野では、その高度な技術をどうのように継承し、生業として成り立たせていくかが常に課題となっています。
そのなかで、町家をアトリエにして様々なジャンルの若い人たちが、新しい感覚のものづくりに取り組んでいます。西陣の繁栄を支えた職人のまちに新しいものづくりが根を下ろしています。

最初から最後まで一人で仕上げるギター


かつて平安京の朱雀大路であった千本通りの西側には、お寺がたくさんあります。
それぞれに由緒のあるお寺ですが、そのなかの華光寺という秀吉ゆかりのお寺が、池波正太郎の鬼平犯科帳に出て来ます。華光寺に、平蔵の父親のお墓があり、平蔵がお墓参りのために京へのぼるのです。池波ファンにとっては、ぜひお参りしたい聖地です。
この界隈は、近所の人が「雨で、孫の幼稚園の運動会が延期になってるんやけど」などと、立ち話をしている、ほっこりする光景が見られる界隈です。

引き戸に小さくて素敵なネームプレートが付いています

「確か近くにギターの工房があったはず」と思いながら歩いていると、ありました。
ギター工房「daily tone guitars」(デイリートン ギターズ)です。
ガラス戸越しに天井から提げられたギターや琵琶に、木を削るような機械や板もあり、何やら木工所のような趣です。一生懸命作業をされているのに、申し訳ないなと思いながらも、若い店主さんに話を聞きました。
専門学校で基本的なことを勉強してから後、ずっと一人で製作と修理、補修を手掛け18年たつそうです。最初から最後まで、外注は一切なしで、すべて一人で、手作業で仕上げます。

ギターには主に、カエデ、マホガニー、ローズウッド、ボニー(黒檀)などの木材が使われますが、しっかり乾燥できている外国産は、日本でも狂いが生じないそうです。
ボディーの表・裏、側面、ネック・銘板など、部分によって適した木材を選びます。木の種類や個体差によって、音色や色合いも変わってくるので、どんな音色をイメージしているのか、楽器全体の雰囲気なども含めて依頼主と相談しながら細部を詰め、設計図を作ります。
音色という目に見えない、はかることのできないものを想像しながらギターという立体に仕上げていくのです。


依頼主の希望によって、螺鈿や彫刻を施すこともあります。その作業も外注には出しません。
感覚・感性といった数値化できない部分と技術を融合させる仕事は、さぞ骨の折れることだろうと思うのですが、ご本人は至って楽しそうで、肩の力が抜けています。「今までにないものを作る、ゼロから作ることがとても楽しい」そうです。

オーダーメードだけでなく、修理や補正も引き受けています。ネックが完全に折れてしまったギターや、他では断られた琵琶も再生させる名医のような職人さんです。
自身もギターが好きで、高校1年の時の文化祭で、伝説のパンク ロックバンドと称される「ラフィン・ノーズ」の曲を引っ提げて演奏したそうですので、かなりロックな少年だったのではないでしょうか。今もライブハウスから声がかかると忙しい仕事の合間を縫ってプレイヤーとしての活動もされています。

工房を訪れる人はみんな口コミで、年代層も幅広く、ジャンルもいろいろです。何よりも「音楽が好き」を共通項にして、自分の楽器にさらに愛着が深まっていくのだと思います。移転先を探していた時、たまたまここが見つかったそうですが、しっくりなじんでいる雰囲気です。世界に一台だけのギターという夢がここでかなえられます。

建都の考える家づくり


デイリートーン ギターズの工房の近くに、建都が開発した手法で建てた、三番町の家があります。こちらもギター作りと同じく木材にこだわり、木の良さを引き出した家です。
京都の地域材を使い、低コストで木の良さを生かした、持続可能なストック型の社会に見合う家づくり、そして、地元工務店、不動産業、設計事務所が連携した「京山々木の家づくりの会」取り組みの実例でもあります。
地域で暮らすことを大切に、コミュニティーの形成と家づくりをトータルにとらえ、今喫緊の課題となっている「災害時の対応」についても、取り組んでまいります。掲げた「京都が好きな建都だから」の思いを具体化し、地域に貢献してまいります。

 

DAILY TONE GUITARS
京都市上京区上立売通千本東入姥ヶ西町609-2
営業時間  11:00~20:00