茶山sweetsHalle 地元に愛され1周年

「茶山をお菓子で元気にしたい」と、みんなの夢を乗せて船出した、小さな洋菓子店「茶山sweets Halle(ちゃやまスイーツはれ)」が開店1周年を迎えました。
建都と長く良いお付き合いのある社会福祉法人 修光学園さんの就労支援施設「ワークセンターHalle!(はれ)」が運営しています。修光学園さんは、洋菓子作りに20年以上前から取り組んで来た実績があり、Halleも京都府内産の上質な素材を使ったおいしいお菓子屋さんとして、徐々に知られるようになり、顔なじみの地元のお客様も増えました。生産者の方との出会いから新商品も生まれ、洋菓子店として着実にレベルアップしています。

この、京のさんぽ道「京都府内産木材を活用した洋菓子店」でご紹介してから1年。働く利用者さんの意欲も高まるなか、満を持し、みんなで迎えた喜びの開店1周年の茶山sweets Halleを取材させていただきました。

志のある生産者さんとの出会い


茶山sweets Halleのお菓子のおいしさは、上質な素材とていねいな手作業から生まれます。商品開発を担当する深田さんは、良い素材を求めて足しげく商談会に出かけるなど、多くの生産者さんや原材料会社の担当者と会って来ました。
開店当初からの看板商品であるバウムクーヘン、ロールケーキ、プリン、マドレーヌなどに使っている米粉、たまご、蜂蜜、塩は、京都府内で誠実にものづくりをしている生産者さんのものです。独特の食感、くせのない甘味、お菓子の味を引き締めるほんのりした塩味など、その素材なくしては作れない味わいであり、茶山sweets Halleの個性となっています。

京都素材シリーズの「抹茶ふぃなんしぇ」と「城州白(じょうしゅうはく)けーき」も、そうした出会いから生まれました。フィナンシェに使う抹茶は、宇治田原町で約550年にわたり、代々受け継がれた土地でお茶づくりを続ける、小山製茶場さんの「茶農喜佐衛門(さのうきざえもん)」ブランドの抹茶です。伝統製法のお茶の豊かな風味が生きるお菓子ができました。
風薫る五月には季節限定のバウムクーヘン「茶月(さつき)」が並びます。新茶の季節感を運んでくれるバウムクーヘンです。
もうひとつの焼き菓子に使っている「城州白」は、幻の梅とも言われ、梅の郷として知られる城陽市で生産されている、香り高い大粒の梅です。梅園の保全と、城陽特産の城州白の活用に取り組む「青谷梅工房」さんと出会い、開発に1年半かけて今の商品が完成しました。
最初、梅のチョコレートっておもしろそうとひらめき、梅干しチョコを作りました。しかし、チョコレートはとてもデリケートで作り方が難しく、みんなが係わることができません。そこで、培ってきた技術もあり、みんなで係われる焼き菓子にしたとのことでした。
梅干しチョコは、商品化すればきっと話題を呼び、メディアにも取り上げられたことでしょう。しかし、みんなが大好きなお菓子作りに係われることを大切にする選択をしました。その思いが、茶山sweets Halleの神髄であり、お菓子にもあらわれています。
深田さんは「実際に生産者さんの所へ行って、思いを聞くと、こちらも同じ気持ちになって、僕たちもいいお菓子を作ろうと思うのです」と語ります。志を持って仕事に携わり、地域を大切にする人と人がつながって、ものづくりの新しい道を開いています。

おかげさまで一周年のサンクスフェア

バウム・ブリュレの表面はキャラメリゼでパリパリの食感に


1月24日からの3日間、感謝をこめてサンクスフェアが開催されました。初日に新発売された「バウム・ブリュレ」は、バウムクーヘンに自家製カスタードクリームがたっぷり詰まっています。注文を聞いてからバーナーでグラニュー糖を焦がす、キャラメリゼを施します。このひと手間が、お菓子をいっそうおいしくします。
3日間限定販売された「チーズinバウム」は、2度焼のバウムクーヘンにコクのあるチーズを合わせています。1日3回の焼き上がり時間をお知らせして、焼きたてを味わっていただく感謝企画です。

この商品は2つとも、バウムクーヘン専用オーブンを設置した工房と販売が一体となった店舗であることを、最大限に生かしています。
ガラス張りの開放的な工房は、清潔な作業場と利用者さんの働く姿が見え、利用者さんも、自分達が作ったお菓子を選んで手に取るお客様の様子がわかります。そのことで仕事への意欲とプロ魂がいっそう高まります。
また、同センターの紙器加工チームの利用者さんも、お昼休みや帰りがけに二人、三人と顔を見せてくれます。なかにはスイーツ男子もいて、品定めをしてから「チーズinバウム」をお買い上げ。「家へ帰ってから食べる」と、仲間が作ったお菓子を一つ、大切に持ち帰る姿が心に残りました。
そして、チラシ配りや日頃の営業努力が実を結び、おなじみになるお客様も増えています。「ずっと気になっていたお店で、初めて来ましたが、とてもいい感じです」「近所なので前から来ています。1周年のチラシのお菓子がおいしそうだったので」という声も聞きました。「いつもありがとうございますと、本当に心から言えるのがうれしいです」という販売担当のスタッフさんの、すがすがしく、まっすぐな情熱もファンを増やす大きな力です。

お店の前は大好きな電車とHalleのお菓子を見られるお気に入りのさんぽ道
ひえいの時刻表も張ってあります

お店は叡電の茶山駅のすぐ近く、お店の前を電車が走り過ぎます。去年3月にデビューした注目の新型車両「ひえい」も間近に見ることができます。座ってゆっくり眺めていただけるようにと、お店の前に木のベンチを置きました。好きなお菓子をベンチでひとつまみ。また時には、通りがかりにひと休み。こうしてまた、人の輪が広がっていきますように。

お菓子で地域を元気にするみんなのより所


「こういうお店が地元にあってうれしい」と思っていただける洋菓子店を目指して、1年間みんなでがんばって来ました。そして今、普段のおやつをはじめ、お誕生日にもHalleのケーキを使っていただけるようになりました。家族や地域のみなさんのコミュニケーションの仲立ちができているとしたら、とてもうれしいことです。
センター長の藤田さんは、「2~3年かけて、知名度を浸透できるかなと思っています。急がず、じっくりです」と語ります。障害のあるなしに関わらず、ともに市民の一人として、地域で暮らし、茶山sweets Halleはそのより所となり、役割を果たしていくことでしょう。
建都は19年前に、障がいのある方のグループホームの内装をさせていただいてからのご縁で、茶山sweets Halleのオープンの工事では、設計監理を担当させていただきました。無垢の木材を生かした、明るく働きやすい店舗を、とのご希望をかたちにするために、工務店、株式会社小寺工業さんには、誠実なお仕事でご尽力いただきました。Halleの建物が、これからも利用者さんが生き生きと喜びをもって働き、地域のだれもが集えるかけがえのない場となることを心から願っています。
叡山電鉄茶山駅のすぐ近く、青い屋根と白い外壁の小さな洋菓子店へ、ぜひお越しください。木のぬくもりを感じる店内は、活気と幸せなお菓子の香りに満ちています。

 

茶山 sweets Halle
京都市左京区田中北春菜町14-1
営業時間 [火~金]10:30~18:00 [土・祝]10:30~17:00
定休日 日曜日、月曜日、第1・3・5土曜日